トラブル防止 そして性能アップのために冷やせ!!
エンジン、ミッション、デフ、ブレーキなど、熱の発生源となるそれらの箇所は、熱がこもると、性能を100%発揮できなくなるばかりか、トラブル発生や機械の寿命を縮めることにもなりかねません。そこで「冷却」に注目です。
ラジエター RADIATOR
発熱の源、エンジン冷却のポイント
(1)エンジン放熱の役割を担っている冷却水やオイルを高性能なモノに換える、(2)冷却水やオイルが冷えやすいように走行風を当てる工夫をする、(3)エンジンルームの熱が抜けやすいように工夫する、(4)冷却水やオイルが冷えやすいように、ラジエターやオイルクーラーを大容量のモノに換える、といった方法があります。
システムはこうなっている
エンジンで発生した熱を吸収した冷却水はラジエターホースを通ってラジエターに送られ、そこで走行風やクーリングファンによって放熱され、再びラジエターホースを介し、エンジンに送り込まれます。ただし、エンジンを冷やす必要のない低温時はサーモスタットのバルブが閉じて、エンジンからラジエターへの冷却水の流れを遮断。サーモスタットは設定温度になるとバルブが開きます。ラジエターキャップは圧力バルブにより、ラジエターを密閉状態に保つ役割。その設定圧力を超えると、冷却水の一部はキャップの脇からリザーバータンクに流れ、そこに溜まるようになっています。
- クーリングファン
- ラジエターキャップ
- エンジン
- リザーブタンク
- ラジエータ
各部の役割
ラジエター
エンジンの熱を吸収した冷却水はラジエターに導かれ、コアの中のウォーターチューブを通ります。その際、隣接するフィンが走行風やクーリングファンによって冷やされているため、熱伝導により放熱されるという仕組みです。
クーリングファン
多くはラジエターの直後に配置され、設定された水温を超えると、ファンが作動してラジエターを強制的に冷やすようになっています。アフターマーケットには、この作動温度を任意に設定できるコントローラーがあります。
ラジエターキャップ
ラジエターのアッパータンクに設置される冷却水注入口の蓋です。圧力バルブが備わり、設定された圧力まではラジエターを密閉状態に保てるので、冷却水が100℃を超えても沸騰することはありません。
リザーブタンク
ラジエターキャップの設定圧力を超えると、圧力バルブが開いて、冷却水の一部がキャップ脇のホースから溢れ出ます。その行き先がリザーバータンクとなっています。タンク側面の目盛は冷却水量のチェックに使います。
単相変圧器は何ですか
ラジエターホース
エンジン→ラジエター→エンジンという冷却水の通り道をつなぐ耐熱ゴムホースです。ラジエターの上部とエンジンをつなぐのがアッパーホース、エンジンとラジエターの下部をつなぐのがロアホースとなります。
素材は使用環境に合わせて選ぶ
スポーツモデルの一部を除いて、純正は銅や真鍮(銅と亜鉛の合金)製がほとんどです。銅や真鍮は自己放熱性に優れていて、走行風が十分に得られない信号待ちや渋滞をともなう街乗りでも冷却効果を得やすいのが特徴です。一方、アルミは熱交換率が高く、走行風によって冷えているときの放熱性に優れています。軽さも利点で、よりサーキット向きといえます。しかし、自己放熱性は劣りますので、街乗りでは銅や真鍮よりも冷えにくい傾向にあります。
銅/真ちゅう製
自己放熱性に優れ、信号待ちや渋滞時も冷やしやすいのが特徴です。が、重さはそれなりにあって、コンマ1秒を競うようなコンペティションの世界では不利になります。もっとも、割安さとオールマイティさを求めるならコチラ。
アルミ製
軽さと走行中の放熱性に優れるので、一般にサーキット向きといわれますが、ラジエター周辺の冷却環境をしっかり整えてやれば、街乗りを含め、オールマイティにも使えるはずです。もっとも、銅や真鍮に比べれば高額なのがネック。
コアって何?
ラジエターの中心部分です。薄い金属板でできたプレートフィンやコルゲートフィンと冷却水が通るウォーターチューブで構成されます。冷却効率を高めるために、コアが2層、3層に重ねてある市販品もあります。
ラジエターの劣化を見極める
水温が上がり気味になる要因はラジエターのほかにもいろいろあって、原因究明は難しい。よって、ラジエターに関しては、日常の目視による点検を励行するのが望ましいということになります。劣化の種類を大別すると、クラックなどによる水漏れ、凍結防止剤などの塩害によるサビや腐食、砂やゴミによるコアの目詰まりなどが挙げられます。ラジエターの修理は、それなりに費用もかさみます。買い替えも含めて検討してください。
クラックなどによる水漏れ
膨張や収縮で力が掛かる部分はクラックが生じやすくなります。また、ハンダ部分の劣化や接着箇所の不良も原因となりがちです。車体の下に水漏れ痕はないか、アッパータンク周辺に亀裂はないか? 日常のチェックが肝心です。
サビ、腐食
凍結防止剤などによる塩害はフィンのサビや腐食につながります。それらの侵食範囲が広がると、本来の放熱性能を発揮できなくなります。冬のドライブ後はラジエター部分に真水を当てて、洗い流すことをオススメします。
どのようなオシロスコープが使用されます
コア目詰まり
砂やゴミが入り込むことや冷却水の内部不純物が蓄積することで起こるコアの目詰まりは、放熱能力を損ない、オーバーヒートの原因にもなります。定期的にエアを吹く、2年に1度は冷却水を入れ替えるなど、対策してください。
ここにも気を配りたい、知っておきたい
冷却水に用いるLLC(ロングライフクーラント)、適度な温度でバルブを開いて、ラジエターにエンジンからの水を回すサーモスタット、冷却水を強制的に循環させるウォーターポンプなども水温上昇を抑えるアイテムとなります。LLCは吸熱/放熱に優れた市販品を選ぶことができます。サーモスタットも早い段階からバルブが開くローテンプ・タイプが市販されています。ウォーターポンプは不具合が生じた場合に、新品交換が一般的です。
LLC(ロングライフクーラント)
LLCは水とエチレングリコールなどを混ぜ合わせたモノで、冷却に加え、防錆や凍結防止の機能も備えています。吸熱性能と放熱性能を高め、キャビテーションを抑える市販のスポーツクーラントがオススメです。
サーモスタット
ノーマルより低い水温でバルブが開き始めるローテンプ・サーモスタットが市販されています。設定水温が極度に低いモノは冬場、オーバークールになる可能性もあるので、季節によってはノーマルに戻す必要もあります。
ウォーターポンプ
クランクシャフトからの動力で、中に備わるインペラー(羽根)が回り、水をかき回すように循環させます。回転軸を支えるベアリングにガタが生じると、冷却水漏れなどが生じます。容量を大きくすることで冷却効果を高めることもできます。
クーリングはボディパーツも関わっている
走行風が入りやすく、抜けやすい設計のバンパーやグリル、ボンネット、アンダーパネルは冷却効果を高めます。それらを市販品に換え、さらに冷却効果を高める方法もありますが、空力性能との兼ね合いも考慮すべきです。
正確なコンディション把握も大切
ノーマルの水温計や油温計の表示はファジーなので、正確な数値を知ることはできません。しかし、実際のところ、夏の渋滞時やスポーツ走行では、意外に上昇しています。そこで、市販の追加メーターが必要になってくるわけです。もっとも、水温と油温は近い数値で推移するので、予算が厳しい場合は水温計だけでもOKです。常に数値を正しく把握して、エンジントラブルを未然に防ぎましょう。また、スポーツ走行後のクーリングに活用して、エンジンをいたわってください。
オイルクーラー OIL COOLER
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油温管理のための冷却装置
冷却水だけでなく、オイルも「冷却」の役割を担っています。また、オイル自体が高温になり過ぎると、「潤滑」「密閉」「洗浄」などの役割もキッチリこなしにくくなります。さらに寿命(賞味期限)も縮まってしまうでしょう。そこで、熱を吸収したオイルを放熱するのがオイルクーラーです。冷却水と同じように走行風で冷やす空冷式と水で冷やす水冷式があります。容量を大きくした市販品もあり、サーキットの連続走行などでは必要度が増します。
こんなところにも使われる
オイルクーラーはエンジン用のみではありません。ミッションやAT、デファレンシャルギア用もあり、フロア下に取り付けるのが一般的です。サーキットの連続走行など、ハードな環境下では必要度が高まります。
インタークーラー INTERCOOLER
過給器に必要不可欠な冷却装置
ターボやスーパーチャージャーといった過給器付きエンジンに用いられています。吸入空気を冷却して充填効果を高め、より大きなパワーを生み出すと同時に、ノッキング防止に努めています。市販品はサイズアップしたモノや設置場所を変えるモノ(上置き→前置きなど)があり、さらなるパワーアップに貢献します。取り付け、セッティングは効率や水温との兼ね合いも考えて行うべきです。
充てん効率をアップするインタークーラー
- サージタンク
- インテークパイプ
- ブローオフバルブ
- インタークーラー
- サクションパイプ
- エアフローメーター
- エアクリーナー
各部の役割
インタークーラー
タービンのコンプレッサーで圧縮された空気は高温になって膨張します。それを冷やし、酸素量を増やしてからエンジンに送り込むことで、より高いパワーを得るのがインタークーラー。市販品による、さらなる性能アップも可能です。
インテークパイプ・サクションパイプ
エアクリーナーからスロットルバルブ、サージタンクに向かう空気吸入パイプです。ターボエンジンの場合は、その間にタービン、インタークーラーを挟みます。曲げや径、形状などを工夫することで吸入効率を高めます。
サージタンク
各シリンダーに入る吸気ブランチが集合する箇所です。その容積はエンジンの出力特性に影響を及ぼします。高回転での充填効率を高め、パワーアップを図るために、容積を大きくするチューニングがあります。
ブローオフバルブ
ブーストが掛かった状態からアクセルを抜いたときに、バルブを開いてサージタンクにある余分な空気を排出し、タービンレスポンスを損なわないようにするのがブローオフバルブの役割です。タービンの保護にもつながります。
タイプは大別して3種類
市販のインタークーラーは純正インタークーラーの位置で付け替える「純正交換タイプ」と、ラジエター前に備え付ける「前置き大型タイプ」、インタークーラーとラジエターの両方にシッカリ走行風が当たるよう、それらをV字に配置した「V字マウントタイプ」に大別されます。エンジンのチューニング内容や走るシチュエーションによって、ベストな選択は変わってきますので、ショップに相談してください。
純正交換タイプ
一部に「前置き」の車種もありますが、インナーフェンダー前やエンジン上部に備わっている純正の位置での交換となるため、純正の効率のよさが引き継げる反面、大きなサイズにはできないという難点が生じます。
フロント置き大型タイプ
ラジエター前に備わるため、冷却効果は抜群。サイズも大きくできます。が、パイプが長くなって効率が悪くなったり、ラジエターやエアコンのコンデンサーに風が当たりにくくなったりする弊害も生じます。
V字マウントタイプ
バンパー下部の開口部という限られたスペースの中で、前置きインタークーラーとラジエターの両方に走行風が当たりやすくするために、それらをV字に配します。主にハイトが稼げないFD3S RX-7などに用いられる手法です。
コクピット・アドバイス
どういった組み合わせで交換したらいいですか?
使用用途に合わせて選びましょう。
夏場のサーキット走行に耐えられる仕様をひとつの目安とするといいでしょう。大容量ラジエター、ローテンプ・サーモスタット、スポーツLLCへの交換と電動ファンコントローラー、水温計の装着がファーストステップです。
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