海外の不便な地で生活している方々のための家電修理のヒント
ちりを払ってテレビを見る、また楽しきかな?
テレビ受像機(英: TV set ; 仏: poste de télévision, téléviseur)は、回路のIC化が進み、空間的に動く部品は全くと言っていいほどなくなりました。これにより故障の発生する頻度は、真空管時代や回転チャンネル時代と比べ、著しく低くなっています。
今日のカラーテレビに残っている唯一の真空管がブラウン管です。このブラウン管の陽極には25〜30 キロボルトの高電圧が使われています。うっかり体の一部が触れることの無いようにできてはいますが、万一高圧に触れたら大変に危険で、人命にかかわります。そこでテレビの修理技能訓練では、高圧を安全に放電させる方法を始めに学びます。
このような危険を含む作業をこの場で扱うことは不適当です。したがって、ここではテレビの修理の話はしません。代わりにテレビをきれいな映像で見るためのヒントを紹介します。私自身近所サービスとしてやってあげて、大いに喜ばれたものです。
作業に伴う危険性を考慮し、三部に分けます。
- テレビの背面を開かないでする作業(一般の方へ)
- テレビの背面を開いてする作業(電気/電子技術者、技能者の方へ)
- NTSC4.43とは? MESECAMとは?--変則(?)テレビジョンシステム
1. テレビの背面を開かないでする作業(一般の方へ)
1) 受信アンテナを放送アンテナの方に向ける
八木アンテナ(昔からある羊の字形の屋外アンテナ)は、最も長い素子のある方がお尻で、短い素子が並んでいる方が頭です。原則として、頭を放送アンテナの立っている方向に向けます。ただし、受信画像が横に二つ以上重なって映る(ゴースト画像と呼ぶ)ような場合は、他の高層ビルからの反射電波が飛び込んでいますので、アンテナの向きを少しずつ360度変えてみて、最も見やすい画像になるようにします。
2) アンテナの高さを変えてみる
地上波の放送を受信するアンテナは、一般に高いほど良好な受信が望めます。ただし、耐風強度とフィーダ線長の限界があります。
3) アンテナの位置を変えてみる
アンテナの前に高いビルや樹木が立っていると受信しにくくなります。特にUHFの電波は影響を大きく受けます。放送アンテナの方角を見ながら、障害物が少ない場所にアンテナを移動することもしばしば有効です。
4) 水平と垂直を間違えていませんか?
アンテナ素子を水平にするか、垂直にするか、ご近所の家々のアンテナの立て方を見て、同じになっていればよいでしょう。
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5) アンテナフィーダー(ケーブル)は切れていませんか?
低品質の同軸ケーブル(英: coaxial cable ; 仏: câble coaxial)は、中心の導線が切れることがあります。疑わしい時は、電池ブザーやテスターで断線がないか調べます。
6) アンテナフィーダーと、テレビ受像機(またはビデオデッキ)のRF IN 端子は、ゆるみなくぴったり接続されていますか? また整合は取れていますか?
アンテナプラグがゆるい場合には、ラジオペンチなどで少し閉じると、ぴったりします。
整合(マッチング)というのは、フィーダのインピーダンス(固有の定数で、平行線フィーダなら300オーム、同軸ケーブルなら75オーム)の値をテレビまたはビデオデッキのアンテナ入力端子のそれ(F型は75オーム、ねじターミナルの場合はそこに書いてある数値)と一致させることです。
7) チャンネル設定のAFT(自動微調)は、ONになっていますか?
8)ブラウン管の表面に、ほこりは溜っていませんか?
住居用洗剤の一部には、ブラウン管表面のコーティングを荒らすものがあります。もし手に入るのなら、ガラスクリーナー(スプレー)がお薦めです。水をよく絞った布で拭くだけでも結構きれいになります。
9) 画質の設定(または調整)は、していますか?
- 「色の濃さ」は淡めの方が、一般に美しい色再現ができます。
- 「色あい」(PALとSECAMでは不要)は、スタジオ内の人の肌の色を見て調整します。日本のテレビ局は、日本人の黄色い肌も白人の肌のような色に調整して放送しますので、受信側でもそのように調整した時に画面全体の色あいがよくなります。日本で録画されたビデオテープを再生する場合にも同じことが言えます。
- 画質(シャープネス)は、中間が最良です。シャープネスを上げると言っても見せ掛けに過ぎず、解像度が上がるわけではありません。ノイズも目立つようになります。
- 映像(ピクチャー、またはコントラスト)は標準設定で最大値(調整ツマミの場合は、時計方向に回し切った位置)にするのが普通ですが、強すぎると感じるなら軽く絞ります。
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2. テレビ受像機の背面を開いて行う作業
[警告] テレビ受像機の内部には高電圧の掛かっている箇所が多くあります。万一高圧に感電しますと大変に危険で、人命にかかわります。
以下の作業は、電気/電子技能者が行うことを想定しています。また、あくまでもご自分の責任において実行してください。なお、ここでは、簡易調整のしかただけを取り上げました。本格的な調整法については、専門書、もしくはサービスマニュアルをご参照ください。
どのように緩やかな動きを作るのですか?
- ほこり取り
- 電解コンデンサの点検
- フォーカス調整
- スクリーングリッド電位の調整
- ホワイトバランス(グレイスケールトラッキング)簡易調整法
- ゴムくさびの調整
- コンバージェンス(R,G,Bの3本の電子ビームの収束)調整
- テストパターン画面を作る
1) ほこり取り
テレビは放熱を良くするため、背面カバーに多くの隙間があります。10年以上使ったテレビの内側には、お化け屋敷のようにほこりが積もっていることがあります。
ほこり自体がテレビ回路の動作に影響を及ぼすことは稀です。しかし、綿ぼこりは部品の放熱を妨げますので、取り除いてやるとテレビが喜びます。
ほこりの吸い取りは、家庭用の電気掃除機で十分きれいにできます。細長い刷毛(はけ)でほこりを払いながら吸い取ると、細かい部分まで掃除できます。
2) 電解コンデンサの点検
アルミ電解コンデンサは使うほどに特性が劣化します。下面から漏れた液が周辺に流れて基板のシミになっているもの、上面や下面が膨れているもの、アルミ箔片が周囲に飛び散ったものなどがあります。もちろん、目で見ただけでは判らないものもあります。これらはいずれも交換が必要です。
電解コンデンサーの交換をする時には、基板の表裏ともにその周辺を、アルコールでよく拭きます。漏れた液体が残っていると、再故障の原因になります。
3) フォーカス調整
鏡を見ながら、走査線が数えられるくらいにきっちり調整します。調整ボリュームは、フライバックトランスの側面に付いています。つまみが2つある場合は、FOCUSと書いてある方です。
4) スクリーングリッド電位の調整
輝度調整(ツマミまたはオンスクリーン)を中間の位置にし、鏡を利用して画面の輝度と、黒と白の中間の階調とがきれいになるようにスクリーングリッド電位を調整します。調整つまみは、大抵フライバックトランスの側面またはブラウン管の頭の近くにあり、SCREENと書かれています。場合によっては副輝度も調整しなければなりません。
5) グレイスケールトラッキング(ホワイトバランス)簡易調整法
画面全体がうっすらと特定の色を帯びている場合に実行します。まず色の濃さを最低にして、完全なモノクロ映像にします。少しでも信号色が画面に見えているとうまくいきません。ブラウン管の口金の基板を見ると、5つの半固定抵抗器があります。これらの現在位置を覚えておくために油性マーカで固定子と回転子にかけて線を引いておきます。
まず黒と白の中間の灰色の部分に注目し、そこが無彩色になるように、BIAS、BKGまたは、CUT OFF と記された半固定抵抗器(R用、G用、B用の3個がある)を調整します。たとえばマゼンタの着色を中和するにはGの量を増してやり、青みが強すぎるのならBの量を減らします。
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次に、輝度を上げたり下げたりしながら画面を観察します。画面の明るい(白っぽい)部分も暗い(黒っぽい)部分も無彩色になるように、DRIVE と記された(普通はR用、B用の2個がある)を調整します。うまくいかなければ、半固定抵抗器を2個とも中間の位置にして上記のBIAS調整を行ってから、再びDRIVEの調整をします。
失敗したら、マーカの線を見て元の位置に戻し、始めからやり直します。何度か繰り返すうちにコツが掴めるでしょう。 半固定抵抗器がない機種では、リモコンを使って調整します。
6) ゴムくさびの調整
偏向ヨークとブラウン管の間に挟まれているくさび形のゴムが外れると、画面全体が台形状に歪みます。これを直すには、鏡で画面を見ながら、ゴムくさびをしっかり差し込みます。偏向ヨークコイルには高圧パルスが印加されているので、感電には十分に注意してください。
7) コンバージェンス(R,G,Bの3本の電子ビームの収束)調整
映像中の輪郭に添って色ずれが見られる場合に調整します。これはブラウン管の首に着いている、6個のマグネットリングを回すことによって行います。まず、濃い色の油性マーカで6個のリング上に一本のはっきりした線を描いておきます。
調整には鏡を用意してください。画像の輪郭の色ずれに注目し、リングを1個ずつ回し、色ずれがどう変化するかを把握します。色ずれを完璧に無くすことは不可能なので、画面全体にわたって、色ずれが最も目立たなくなる位置で妥協します。
終ったら、硬質プラスチックを接着しない接着剤で6個のリングを軽く固めます。
8) テストパターン画面を作る
以上の作業は、テストパターンがあると円滑に行なえます。なければ、テストパターンをビデオテープに録画しておくと便利です。ビデオ(映像)出力のあるパソコンをお持ちなら、グラフィックプログラムを使ってテストパターン画面を自作するのも楽しいものです。
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3. NTSC4.43とは? MESECAMとは?--変則(?)テレビジョンシステム
世界中にいろいろとあるテレビジョン方式のうち、わけのよく分らないものが2つあります。NTSC4.43 と MESECAM です。どちらも放送には用いられません。尋ねられることも多いので、ここで簡単に説明します。
1) NTSC4.43
ビデオデッキの機種で[VHS]マークの下に小さな文字で PAL NTSC4.43 と記されたデッキがあります。これは、PALシステムをベースとして設計されています。このような機種で、PAL用の信号処理回路をNTSCテープの再生に流用して得ているのが、NTSC4.43信号です。一部の技術者は、かつてこれをインチキNTSCと呼んだこともありました。ビデオデッキからテレビ受像機に送られる信号だけにある方式です。
本来のNTSCは、NTSC3.58です。3.58や4.43というのは、クロマ信号(色相と彩度に関する信号)の副搬送波(サブキャリヤ)の周波数(MHz)です。この副搬送波の周波数以外に両者間の違いは無いと言って差し支えないものです。
PAL用の信号処理回路を用いてNTSC4.43ビデオ信号(映像複合信号)をビデオテープに記録すると、NTSC3.58 ビデオ信号を記録したビデオテープと実用上同じものができます。つまり、ビデオテープのレベルでは、3.58と4.43の間の違いはありません。
NTSC3.58にもNTSC4.43にも対応していいないビデオデッキを用いてNTSCテープを再生することはできません。もちろん、NTSC信号を録画することもできません。なお、NTSC3.58専用機は、[VHS]マークの下に何も記されていません。
NTSC4.43信号をカラーで見るためには、NTSC4.43システム対応のテレビが必要です。
2) MESECAM(メセカム)
PAL用の回路をSECAMビデオ信号の記録に流用して録画すると得られるのが、MESECAMのテープです。MESECAMは、記録されたテープの上だけにある方式です。初めはProvisional SECAMとか、Modified SECAMと呼ばれていたこともありました。PALとSECAMの混在する欧州、アフリカ、中東などで多く見られます。
MESECAMのテープをPAL用の回路で再生すると、SECAMビデオ信号が得られます。つまり、ビデオ信号のレベルでは、MESECAMというものはありません。したがってMESECAM対応のテレビというものもありません。放送用のSECAM BG方式のことをMESECAMと呼ぶこともありますが、この呼び方は止めるべきです。
SECAMのビデオソフトテープ(ほとんどはフランス製)をMESECAM/PAL兼用機で再生しても色が再生できません。モノクロの映像になります。SECAMテープの再生で色を出すには、[VHS]マークの下に小さくSECAMと書かれたビデオデッキが必要です。ただし、PAL機にSECAM再生モジュールを追加することは、比較的に簡単な技術と費用でできます。
私の知る限りでは、MESECAMのビデオソフトテープが正規に販売されることはありません。
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